こんにちは、コポローです。
今回は、憲法の司法試験考査員(学者枠)を紹介します。
司法試験の出題は、主として学者委員が問題案を持ち寄り、議論等を経て決まります。ですので、学者委員の関心や考え方を知っておくことは有益です。
以下では、2023年の司法試験委員(憲法学者)4名について、専門分野や著作を紹介します。
①大河内 美 紀 (名古屋大学)
令和5年より司法試験考査委員です。
名古屋大卒。アメリカ法系。
専門は意見審査制度、憲法の解釈方法
最近の著作
・日本国憲法のアイデンティティ(NUMBER:12・完)グローバル化と憲法のアイデンティティ : 行政法学との対話 : 座談会 宍戸 常寿, 興津 征雄, 赤坂 幸一, 大河内 美紀, 西村 裕一, 林 知更, 山本 龍彦 論究ジュリスト = (38) 168-195, 2022
・夫婦同氏制度の合憲性 『令和3年度重要判例解説』 ( 1570号 ) 頁: 26 - 27 2022年
・2021年大法廷決定の行間 判例時報 ( 2503 ) 頁: 93 - 93 2022年2月
・「君が代」起立・斉唱の職務命令違反と再任用職員等の採用における裁量 新・判例解説watch ( 24 ) 頁: 13-16 2019年3月
大河内 先生著作(共著を含む)の教材↓
☝一流の学者らによる演習書で、純粋におすすめです。
②市川 正人(立命館大学)
京大卒。アメリカ法系。
専門分野は、表現の自由規制立法の違憲審査基準、憲法訴訟、法曹養成制度(司法制度改革)です。
最近の論文等
「統治構造において司法権が果たすべき役割 第3部(第6回)表現活動への国家の「援助」と表現の自由」判例時報 (2528) 130-137, 2022-10-21
「在外国民国民審査権訴訟違憲判決の意義と課題」法学セミナー 67 (10), 40-45, 2022-10
「判例理論の展開と最高裁判所裁判官」憲法研究 (10) 9-20, 2022-05
「社会保障の現状と改革課題 (特集 転換求められる経済・政治・労働)」社会主義 (711), 44-51, 2021-09
「「団体内紛争」と司法権 : 最高裁大法廷判決を受けて (特集 地方議員出席停止処分大法廷判決)」論究ジュリスト (36), 134-142, 2021
「表現の自由を改めて考える : 表現の自由の保障の意味 」(特集 あいちトリエンナーレ 「表現の不自由展・その後」中止問題を考える):法と民主主義543号16頁(2019)
(判例評釈)裁判官のツイッター投稿の「品位を辱める行状」該当性[最高裁平成30.10.17決定]民商法雑誌155巻4号804頁(2019)
「表現の自由 : 表現内容規制・内容中立的規制二分論 」(特集 再確認・憲法の基本)法学教室452号22頁(2018)
「 適用違憲・再考 : 違憲審査と違憲判断の方法について(2)」立命館法學 2017(4), 1445-1484, 2017
「公共施設における集会の自由に関する一考察 : 金沢市役所前広場訴訟を素材に」立命館法學 2017(3), 799-831, 2017
市川先生執筆の教科書はこちら↓
コンパクトで読みやすいです。
※レビュー抜粋
・明瞭な説明と分かりやすい図解が、初版以来、大変勉強になっています。
・第2版では、最新の判例等が掲載されたほか、コラムが充実しました。
・このような内容の補充にも関わらず、頁数は初版よりも減っています。(初版の本文405頁に対して、2版は382頁。)
・この分量で憲法全体をカバーし、最新の論点にも触れ、しかも図表まで掲載されている本書は、まさに驚異的な概説書です。
・最近の状況を踏まえて憲法の判例や論点を382頁ほどにうまくまとめられている。このテキストを精読するだけで憲法の理解は格段に進むであろう。まず、市川先生は参考文献を2010年以降に出版された論文やテキストに絞っておられる。次に判例も最高裁判例については昭和23年から令和3年6月までのものに絞られている。これがこのテキストを速習性に優れたものに仕上げてくれている。それでいて概念説明も的確である。ベン図を用いた概念説明が随所にあるが、おそらく黒板に実際に示しておられるのであろう。19ほどあるのだがわかりやすいと思う。青いインクを用いた二束刷りである。何より、司法試験委員であり、資格試験の受験生は一度目を通しておかれても良いかもしれない。
③ 山元 一(慶応大学)
令和4年度から司法試験考査委員に加わりました。
研究テーマは、「グローバル化の進展によって、憲法学、国家に関する基礎理論・人権論・統治機構論はどのような課題に直面しているのか」とのこと。
最近の論文等
「ロシアによるウクライナ侵略と日本国憲法の思想」 法律時報 95 (4), 66-70, 2023-04
「信教の自由・宗教団体・市民社会秩序」 消費者法研究 (13) 85-121, 2022-12
「関係の破綻した夫婦と子の法的関係を考える : 共同親権問題を中心に」日仏文化 (90), 63-65, 2021-03
「グローバル化と憲法秩序」『法学セミナー』774号〔2019年〕12-17頁
「覚書:グローバル化時代における『市民社会』志向の憲法学の構築に向けて」『法律時報』90巻10号〔2018年〕74-79頁
「司法権と憲法訴訟の課題・再考」憲法研究 (7), 1-5, 2020
「司法制度改革20年と司法・憲法訴訟」憲法研究(7)7-29,2020
山元先生の執筆した教科書はこちら↓
放送大学のテキストで、コンパクトです。
④只 野 雅 人(一橋大学)
「地方選挙と民主主義のいま」 Voters = ボーターズ : 選挙と政治を自分事に / 明るい選挙推進協会 編 (72) 3-, 2023-02
「直接請求制度 : 原点から考える」 地方自治 / 地方自治制度研究会 編 (898) 2-16, 2022-09
「議院内閣制をめぐる憲法問題」 法学教室 (501) 30-34, 2022-06
「例外的状況と憲法」 税経新報 / 税経新人会全国協議会 [編] (709) 4-11, 2022-05
「政治主導・再考 : 安倍一強・コロナ禍と官邸主導 」税経新報 (698), 4-11, 2021-05
「政治主導の政策形成と国会 : 政治主導にどう向き合うか 」法の科学 : 民主主義科学者協会法律部会機関誌 (52), 42-53, 2021
「道標なき時代の代表民主政と憲法学 : 選挙制度・政党・国会 (特集 憲法の75年)」論究ジュリスト = Quarterly jurist (36), 101-108, 2021