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【保存版】会社法の試験前に押さえておくべきポイント(各種の無効原因まとめ)

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法の各種論述試験の前に押さえておくべき重要ポイントとして、各種の無効原因について解説します!

 

会社法では、無効原因が条文で書かれておらず、解釈に委ねられている場合が少なくないです。こうした無効原因については、ある程度、暗記が必要となります。

 

そこで今回は、江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』などを参考に、各種の無効原因について、まとめてみました(判例・通説ベースです)。

 

さらに、試験に出やすいものに下線を引いています!!

 

本記事を参考に、復習してみて下さい(*^_^*)

 

 

(1)設立の無効事由(828条1項1号参照)

・設立の設立無効事由は「設立手続に重大な瑕疵があること」

・具体例は下記のとおり

①定款の絶対的記載事項の定めに重大な瑕疵がある(27条参照)

②設立時発行株式を1株も引き受けない発起人がいる(25条2項参照)

③公証人による定款の認証がない(30条参照)

④発起人の全員の同意による設立時発行株式に関する事項の決定がない(32条参照)

⑤設立に際して出資される財産の価額(その最低額)に相当する出資がない(27条4号参照)

※ただし、事後に不足額の補填がなされれば、瑕疵が治癒される(無効事由が消滅する)。

⑥募集設立において創立総会が不開催である

⑦設立登記が無資格者の申請に基づくなど無効である

 

 

 

 

(2)株主総会決議の不存在事由(830条1項参照)

※決議取消事由・無効事由は、それぞれ831条1項各号・830条2項で示されている。

 

①決議が物理的に存在しない場合(議事録だけ作成され、登記されている場合を含む)

 

②下記のように、何らかの決議はあっても、手続に著しい瑕疵があるために法的に株主総会決議と評価できない場合(決議取消事由との境界はあいまい)

・一部の株主が勝手に会合して決議した場合

取締役会設置会社において平取締役が取締役会の決議に基づかずに株主総会を招集した場合(最判昭和45年8月20日判時607号79頁)

・招集通知もれが著しい場合(最判昭和33年10月3日民集12巻14号3053頁。発行済株式の42%を有する株主6名に全く通知しなかった事例)

 

 

(3)新株発行の無効事由(828条1項2号参照)

新株発行の無効事由は、株式譲受人の取引安全の要請や、資金調達により営業活動が拡大された後に資金調達が無効にされると債権者や取引先等にも混乱が生じるおそれがあることから、判例上、限定的に解されている

新株発行の無効事由としては、下記の場合が挙げられる。

 

①定款所定の発行可能株式総数を超過する発行

②定款の認めない種類株式の発行

③譲渡制限株式の発行に必要な株主総会決議・種類株主総会決議に瑕疵があること(最判平成24年4月24日会社法判例百選第4版26事件参照)

④譲渡制限株式につき株主の募集株式を割り当てる権利(202条2項)を無視した発行

 

譲渡制限株式以外の株式の発行に係る手続状の瑕疵は、原則として無効事由とならない(差止事由にとどまる)が、募集事項の通知・公告を欠く場合は、差止めの機会を奪うことになるため、当該通知・広告の欠缺以外に差止事由がない場合を除いて、無効事由となる(最判平成9年1月28日会社法判例百選第4版24事件)

 

⑥支配株主の移動に伴う募集株式割当ての通知・公告(206条の2第1項・2項)を欠く場合も、⑤と同じと解される(江頭808頁)。

⑦  ⑥の通知・公告は行われたが、総会決議が必要な場合に(206条の2第4項)に当該決議が行われなかったことも、無効事由になると解すべきである(江頭808頁。その理由として、時間的に差止の機会がないこと、実質的に会社の基礎の変更にあたること、発行株式は支配株主の下にとどまっているのが通例であることが挙げられる)

 

⑧株主割当てにおける募集事項の通知(202条4項)と効力発生(209条1項2号)の間隔が短く、差止めの機会がなかったことを無効事由になるとした裁判例がある(大阪高平成28年7月15日判タ1431号132頁)。

 

⑨募集株式の発行等の差止仮処分命令に違反して発行が行われたこと(最判平成5年12月16日会社法判例百選第4版99事件。仮処分の実効性担保のため。)  

 

 

 

 

(4)組織再編行為(合併や会社分割など)の無効事由(828条1項7号以下参照)

・組織再編契約の内容が違法である

・組織再編契約等に関する書類の不備置・不実記載

株主総会の承認決議の瑕疵

・株式買取請求(新株予約権買取請求)の手続の不履行

・債権者異議手続の不履行

・簡易手続や略式手続の要件を満たさないのに、その手続が採られる

・消滅会社の株主に対する株式の割当てが違法になされる

独占禁止法違反の合併等がなされる

・組織再編について認可を要する場合に、それがない

・株式交付の場合限定:譲渡申込株式の総数が株式交付計画で定めた下限を下回る

など

 

以上は、差止事由にもなる。

差止事由とは重複しない無効事由としては、下記のものがある。

・差止仮処分命令違反

・組織再編契約(合併契約等)の意思表示の瑕疵(錯誤など。名古屋地判平成19年11月21日金判1294号60頁)

・会社分割の場合限定:労働者との協議義務が全く履行されない

・株式交付の場合限定:効力発生日に株式交付親会社が給付を受けた株式交付子会社の株式が下限を下回る、または効力発生日後に譲渡の無効・取消しで譲受株式が下限を下回る

 

 

平成26年会社法改正で組織再編の差止規定が創設されたことから、新株発行の場合と同様に、無効事由を限定解釈すべきかという問題が生じている。

これについては、学説では限定解釈する必要はないとの見解が多数であるように思われる(江頭925頁注1参照)。

 

 

今回の記事は以上です。

気になった部分は詳しめの基本書などで確認してみて下さい。

それではまた!!