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【判例速報】最決令和5年5月24日 会社法144条2項の譲渡制限株式の売買価格決定と非流動性ディスカウント

本ブログでは、最新の判例を随時紹介したいと思います

(私の業務・関心の関係で、会社法が中心となります。)

 

今回は、最決令和5年5月24日です。

会社法144条2項の譲渡制限株式の売買価格決定において、

DCF法(企業の将来のキャッシュフローを予想して現在価値に割り引く方法)によって算定された株式価値評価額から、

流動性ディスカウント(市場性がない株式であるため、売りたくてもすぐに売れないことを考慮し評価額を下げること)を行うことを認めた最高裁判例です。

   

 

 

 

決定要旨は、以下の通り。

「所論は、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行った原審の判断には、法令解釈の誤り及び判例違反があるというものである。」

会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続は、株式会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものである。そうすると、上記手続により譲渡制限株式の売買価格の決定をする場合において、当該譲渡制限株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に、非流動性ディスカウントを行うことができるものと解される。このことは、上記譲渡制限株式の評価方法としてDCF法が用いられたとしても変わるところがないというべきである。

もっとも、譲渡制限株式の評価額の算定過程において当該譲渡制限株式に市場性がないことが既に十分に考慮されている場合には、当該評価額から更に非流動性ディスカウントを行うことは、市場性がないことを理由とする二重の減価を行うこととなるから、相当ではない。しかし、前記事実関係によれば、本件各評価額の算定過程においては、相手方らに類似する上場会社の株式に係る数値が用いられる一方で、本件各株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれない。したがって、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行うことができると解するのが相当である。」

「以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例最高裁平成26年(許)第39号同27年3月26日第一小法廷決定・民集69巻2号365頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。」

   

 

 

 

コメント

流動性ディスカウントを否定した判例として、最判平成27年3月26日がありますが、学説では批判が強く、その射程は限定的に理解されるべきと言われていました。

そして、本判例は、最判平成27年と「事案を異にする」として、最判平成27年の射程を限定しました。

最判27年は、非流動性ディスカウントを行うと「二重の減価」になる事案だったということでしょう。

最判平成27年の理解については、田中亘「会社法」第4版696~697頁がわかりやすいです。

今回の令和5年最高裁決定は、田中先生らのご見解と整合的です。

 

※2023年3月末刊行。

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