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2023年(令和5年)司法試験の出題分野予想【商法】

こんにちは、コポローです。

今日は、令和5年度司法試験(商法)の出題分野について、いくつか予想したいと思います。 

 

 

 

司法試験の出題は、原則として、過去3年程度の過去問(予備試験を含む)と出題分野が重ならないように配慮されているといわれていますので、まず、過去3年程度の出題分野は予想から除外します。

 

本記事は、①司法試験の出題動向、②予備試験の出題動向、③2023年(令和5年)の出題予想の順に記載します。

(①・②については、過去問をまだ解いていない人はネタバレを含みますので閲覧注意です)。

 

 

司法試験の出題動向(出題の趣旨からの抜粋)

令和4年度

①取締役の任期を短縮する定款変更がされるとともに取締役選任議案が否決されたという一連の経緯によって取締役の地位を失った者が会社に対して損害賠償請求をすることの可否(設問1)

②親会社の圧力の下でいわゆるデュー・ディリジェンスを行うことなく事業を譲り受けたことに関する取締役の任務懈怠責任(設問2)

③事業を譲渡した会社(譲渡会社)の商号の一部が含まれている商標を使用した場合における事業を譲り受けた会社(譲受会社)の責任(設問3)

 

令和3年度

公開会社でない株式会社(以下「非公開会社」という。)において,

代表取締役が当該株式会社を代表して当該代表取締役が個人として負う債務を連帯して保証する旨の合意をした場合に,当該株式会社がその連帯保証債務の履行を拒絶するために考えられる法的な主張としてどのようなものがあり,そのような主張が認められるのかを問うとともに(設問1),※間接取引および多額の借財の問題

②誰が株主であるかが争われている場合に,具体的な事実関係の下でどのように株主を認定すべきか(設問2),※他人名義での株式引受け(最判昭和42・11・17)の問題

議決権の行使を委任することができる代理人を株主に限る旨の定款の規定がある場合に株主ではない弁護士が代理人として議決権を行使することの可否や,株主である株式会社の代表取締役がその内部的制限に反して当該株式会社を代表して議決権を行使することの可否といった株主総会における議決権行使の在り方(設問3)

を問うものである。

 

令和2年度

非公開会社の募集株式の発行等をする場合にどのような手続が要求されるか,それらの手続に瑕疵があることが当該募集株式の発行等の効力にどのような影響を及ぼすか,及び募集株式の発行等の無効をどのような訴えにより主張すべきかについての理解等を問う(設問1)

②会社が特定の種類の株式のみを対象として株式の併合をしようとする場合に,当該種類株式の株主とその他の種類株式の株主がどのような利害状況に置かれるのか,及び不利益を受けるおそれのある種類株式の株主の事前の法的救済方法としてどのようなものが考えられるかの理解等を問う(設問2)

 

 

 

 

 

予備試験の出題動向(出題の趣旨からの抜粋)

 

令和4年度

本問は、株主の権利行使に関する利益供与に関与した者の責任及び株主がその責任
を追及する訴えを提起するための手続を問うものである。
設問1では、A、B及びEに対する請求については会社法第120条第4項を、Cに対する請求については同条第3項を根拠とすることが考えられる。いずれの請求についても、本件取引が、同条第1項によって禁止される株主の権利行使に関する利益供与に該当するかを検討することが求められる。その際、一度は本件土地の買取りを見送ることとしたにもかかわらず、改めて本件取引をすることを決定したA、B及びEの意図について、甲社の株主構成と株主の持株比率、更にAとDが対立していることなどの事情を踏まえて検討する必要がある。また、本件取引が適正な対価での売買であることにも触れることが望ましい。A、B及びEについては、利益の供与をすることに関与した取締役(同条第4項、会社法施行規則第21条第1号、第2号)に当たることを指摘しなければならない。

設問2では、設問1で検討したCに対する返還請求も会社法第847条第1項の責任追及等の訴えの対象となることを確認した上で、本件訴えが適法な手続を経て提起されたといえるかを検討することが求められる。Dによる提訴請求は適法にされたとはいえないとするAらの主張は、監査役設置会社においては監査役に対して提訴請求をすべきであるところ(同法第386条第2項第1号)、甲社の監査役Fが同社の完全子会社である乙社の取締役に就任したことにより兼任禁止(同法第335条第2項)に抵触するため、提訴請求の時点でFは甲社の監査役を辞任していたことになり(最判平成元年9月19日集民第157号627頁参照)、Fに対する提訴請求は適法とはいえないというものである。この主張を踏まえて、提訴請求の時点でFは甲社の監査役又は監査役の権利義務を有する者(同法第346条第1項)であったといえるか否かなどを考慮して検討する必要がある。

 

令和3年度

設問1では,Cと乙社との取引が甲社に効果帰属するための主張及びその当否を
指摘することが求められている。具体的には,①Cは甲社の代表取締役として適法
に選定された者といえるかにつき,取締役会設置会社における株主総会による代表
取締役選定に関する定款規定の有効性に関する議論(最判平成29年2月21日参
照)を前提に,Aの承諾をもって株主総会決議としてよいか,さらにCが甲社の代
表取締役であるとは認められない場合であっても,②Cが登記簿上は代表取締役
あることから,会社法第908条第2項に基づき,甲社は乙社にCが代表取締役
はないと主張することができないと解する余地があるか,あるいは③Cが表見代表
取締役(同法第354条)に該当するために,甲社はCの行為についての責任を負
うと解する余地があるかについて,検討することが期待されている。上記②及び③
を検討するに当たっては,大株主であるAの関与や代表者印の管理不備の問題をど
のように評価するかがポイントとなる。

設問2では,本件慰労金の返還請求の根拠・内容として,本件慰労金が取締役の
報酬等(会社法第361条第1項)に当たることを前提に,本件慰労金の支給につ
いて定款の定めも株主総会決議もないことから,Bは本件慰労金相当額の具体的請
求権を有しているとはいえず,本件慰労金は不当利得となることを指摘することが
求められる。本件慰労金の返還を拒むために,Bの立場からは,本件慰労金を不確
定額の報酬(同項第2号)と捉えて,AがBをスカウトした際にその支給を約束し,
かつその当時は甲社の全株式を有していたAがその支給について同意したと主張す
ることが考えられる。また,甲社における取締役報酬支給の慣行,AがBをスカウ
トした際の説明,及び本件慰労金の返還請求に至った経緯等を前提とすると,甲社
による本件慰労金の返還請求は信義則に反し,権利濫用に当たると主張することが
考えられる(最判平成21年12月18日参照)

   

 

 

 

令和2年度

(設問1)本件買取りに関するBの乙社に対する責任及びAの甲社に対する責任の有無と,それをCが甲社の株主として追及する方法を検討することが求められている。Bの乙社に対する責任については,本件買取りは乙社における利益相反取引自己のためにする直接取引会社法第356条第1項第2号)に当たるが,乙社の唯一の株主である甲社の代表取締役Aによる承認を得ていることを,Bの乙社に対する責任の有無との関係でどう評価するかがポイントとなる。

この場合,当該Aの同意のみではBの乙社に対する責任(特定責任)を免除することはできないことについても理解しておく必要がある(会社法第847条の3第10項)。Aの甲社に対する責任については,不適切な子会社管理であるとして任務懈怠に当たるか否かや,甲社をして乙社における利益相反取引に当たる本件買取りについて同意・承認せしめたことが任務懈怠に当たるか否かなどを検討した上で,甲社に生じた損害をどのように考えるべきかが問題となる。また,以上の責任をCが甲社の株主として追及するには,乙社との関係ではいわゆる多重代表訴訟会社法第847条の3)を,甲社との関係では株主代表訴訟会社法第847条)を提起することになるが,特に前者についてその可否を検討することが求められる。


(設問2)本件合意の内容を実現させる手続として,甲社における自己株式の取得の手続会社法第156条等)及び子会社株式の譲渡の手続会社法第467条第1項第2号の2)並びに丙社における譲渡制限株式の譲渡承認手続会社法第139条)について説明することが求められる。

   

 

 

 

 

2023年(令和5年)度の出題分野予想

・まず、平成26年会社法改正に関連させた問題が出そうです(予備試験ではすでに多重代表訴訟、監査等委員会設置会社、払込みの仮装に関する出題があります)。具体的には、①濫用的会社分割、②組織再編行為の差止め・無効の訴え、③特別支配株主による株式売渡請求あたりが怪しいです。

 

・また、令和元年会社法改正に関連する問題も、そろそろ出てもおかしくありません。

具体的には、①株主提案権の個数制限、②取締役報酬としての株式・新株予約権の発行、③社外取締役関係、④会社補償、⑤株式交付あたりが出題しやすいため、要注意です。

 

・このほか、設立関係、失念株、現物出資規制(207条)と関連する責任制度(212条・213条)株主提案競業取引、違法配当、キャッシュアウト(スクイーズアウト)に関する問題の出題もありそうです。

 

・いずれにせよ、その場で考えさせるタイプの問題も少なくないので、各制度趣旨や問題文の状況をしっかり理解したうえで、論理的・合理的な解釈を行うよう心がけましょう!

 

なお、司法試験の出題は、主として学者委員が問題案を持ち寄り、投票・議論等を経て決まります。ですので、学者委員の関心や考え方を知っておくことは有益です。

学者委員のプロフィールや著作等については、下記記事も参考にしてみてください(私の上記出題予想もこれを一定程度踏まえています)。

 

kaishaho.hatenablog.jp

 

 

 

今回の記事は以上です。

本記事がみなさんの参考になれば幸いです(*^-^*)

それではまた!

 

 

kaishaho.hatenablog.jp