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2023年(令和5年)司法試験の出題分野予想【行政法】

こんにちは。

今日は2023年司法試験【行政法】の出題分野を予想します。

 

司法試験の出題は、原則として、過去3年程度の過去問(予備試験を含む)と出題分野が重ならないように配慮されているといわれていますので、まず、過去3年程度の出題分野は予想から除外します。

過去の出題分野は下記の通りです(過去問をまだ解いていない人はネタバレを含みますので閲覧注意です)。

 

 

 

 

 

司法試験の出題動向(出題の趣旨からの抜粋)

令和4年

林地を開発して一定規模以上の事業場を設置するためには、森林法(以下「法」という。)第10条の2第1項に基づく都道府県知事の許可(以下「開発許可」という。)が必要となる。本問は、A株式会社(以下「A」という。)がB県C市に所在する自己所有地を中心とする区域を事業の用に供するための大規模な開発行為(以下「本件開発行為」という。)に関し、開発許可に係る申請前の段階から開発許可後の開発行為に関する工事の完了までの一連の行政過程の中で、C市や地域住民との間で生じる法的問題について検討するものである。
本問では、Aの申請に係る開発行為の許否を決定する審査段階で行われた、B県担当課長とB県法務室長(弁護士)との【検討会議の会議録】を読んで、地域住民や地権者が原告となって提起することが想定される取消訴訟の訴訟要件と本案の主張に関する法的問題のいくつかについて同法務室長の立場から検討することが求められる。
まず、【設問1】⑴は、Aの申請に係る開発許可の取消訴訟を第三者が提起する場合における原告適格の存否を問うものである。本問では、仮に、B県知事がAの開発行為を許可した後、開発区域内外の土地所有者で立木所有者であるEと、開発区域を水源とする沢(以下「本件沢」という。)に沿って本件開発区域外に居住する者で過去に溢水等による浸水被害を受けたことがあり、かつ、本件沢から取水した水を飲料水や生活用水として使用するFの2名が原告となって同許可の取消訴訟が提起されることを想定し、最判平成13年3月13日民集55巻2号283頁を参考にして、同訴訟におけるE及びFの原告適格の存否を問うものである。行政事件訴訟法第9条に基づき、法第10条の2等の規定を踏まえ、E及びFのそれぞれについて原告適格の存否を検討することが求められる。
次に、【設問1】⑵は、Aの申請時点では開発区域内の土地所有者であるEは本件開発行為に同意していなかったが、仮にEが同意に転じ、Fのみが前記許可の取消訴訟を提起した場合を想定し、同訴訟の係属中に本件開発行為に関する工事が完了した後においても、Fに訴えの利益が認められるかを問うものである。このような場合の訴えの利益はゴルフ場建設を目的とした開発許可の事例に関する最判平成7年11月9日集民177号125頁によれば否定されているが、その理由が必ずしも明確ではない。そこで本問では、建築確認の取消訴訟係属中に当該建築物の建築工事が完了した事例に関する最判昭和59年10月26日民集38巻10号1169頁を参考にしつつ、開発行為に関する工事の完了による開発許可の法効果など、法の仕組みを踏まえ、Fの訴えの利益が否定される理由付けを明確化し、検討することが求められる。


最後に、【設問2】は、B県知事がAの申請に係る許可をし、Fが同許可の取消訴訟を提起した場合を想定して、Fによる違法事由の主張とそれに対するB県の反論を問うものである。

まず、(i)Fの主張する違法事由として、Eの同意がない段階においてB県知事がAの申請に係る開発許可をした場合、森林法施行規則第4条第2号に規定する「相当数の同意」に関し、同知事が審査基準として自ら設定・公表しているB県林地開発行為の許可基準(以下「本件許可基準」という。)第1-1-①を満たしていない旨の主張が考えられる。この点に関するB県の反論では、開発行為に関する許可につきB県知事に裁量権が認められることから、本問のように開発区域内における権利者が2者である場合、開発区域内でAの所有林が占める面積の割合をも考慮して許可することができるかに関して本問における事実関係に即した検討が求められる。
次に、(ⅱ)Fの主張する違法事由として、C市水道水源保護条例に基づき規制対象事業場として認定(以下「本件認定」という。)されているから、本件許可基準第1-1-②を満たしていない旨の主張が考えられる。この点に関するB県の反論では、いわゆる紀伊長島町水道水源保護条例事件の最判平成16年12月24日民集58巻9号2536頁を参考にしつつ、本件認定に至るプロセスなどの本問における事実関係に即した検討が求められる。その際、かつて市町村による土地の使用制限に関する処分が違法であると評価して開発許可をしたというB県の運用を踏まえた検討も求められる。
最後に、(ⅲ)Fの主張する違法事由として、Aが設置を計画している貯水池の容量ではFの生活用水に不足が生じ、水確保要件と本件許可基準第4-1を満たしていない旨の主張が考えられる。この点に関するB県の反論では、Aが設置を計画している住民の生活用水確保のための貯水池に関して水確保要件及び本件許可基準第4-1の規定内容を踏まえ、Fが主張する規模の貯水池設置に関する技術的制約とそれに要する費用の問題等について検討することが求められる。 

 

 

令和3年度

本問は,A市の市道上で屋台営業を行うために必要な市道占用許可(道路法第32条第1項第6号)を自ら取得せず,他人の名義を借りて屋台営業を行ってきた者(以下「他人名義営業者」という。)であるBが,名義貸し行為の一掃を目指すA市屋台基本条例(以下「本件条例」という。)の施行後も,従前からの場所(以下「本件区画」という。)で屋台営業を続けるため,本件条例第25条所定の屋台営業候補者の公募に応募したところ,A市長(以下「市長」という。)が本件区画についてBを屋台営業候補者に選定しない旨の決定(以下「本件不選定決定」という。)を行う一方で,Cを屋台営業候補者に選定する旨の決定(以下「本件候補者決定」という。)を行ったという事例における法的問題について論じさせるものである。


〔設問1〕⑴は,本件不選定決定の処分性の有無を問うものである。Bは屋台営業候補者の公募に応募して本件不選定決定を受けたことから,まずは,本件条例及び本件条例施行規則の仕組み(屋台営業候補者であることが市道占用許可の要件の一つとなっていること,A市屋台専門委員会(以下「委員会」という。)は選定基準に則して推薦を行い,それを受けて市長は選定を行うこと,市長は選定又は不選定の決定の通知を行うこと等)に即して,屋台営業候補者の選定が申請に対する処分に当たるか,したがって本件不選定決定は申請拒否処分に当たるかについて検討することが求められる。他方で,Bが最終的に求めているのは市道占用許可であるため,本件不選定決定は中間段階の決定にすぎず,処分に当たらないのではないかという問題もある。そこで,本件不選定決定の処分性の有無については,Bが市道占用許可を申請して不許可処分を引き出し,その取消訴訟の中で本件不選定決定の違法性を争うといった訴訟手段との比較も視野に入れて検討する必要がある


〔設問1〕⑵は,市長が既にCに対して本件候補者決定を行っていることから,Bが本件不選定決定の取消しを求める訴えの利益が失われていないかを問うものである。この問題については,最判昭和43年12月24日民集22巻13号3254頁を参考にして,BとC及び本件不選定決定と本件候補者決定がいかなる関係にあるかを踏まえ,本件不選定決定の取消判決の効力によって生じることになる事態を正確に追跡し,Bが屋台営業候補者に選定される可能性が残っているかを検討することが求められる。


〔設問2〕は,本件不選定決定の取消訴訟において主張すべき違法事由を問うものである。まず,本件不選定決定の違法事由を検討する前提として,①本件条例の施行の際にBの地位への配慮に欠ける点がなかったか,②委員会の屋台営業候補者の推薦に係る判断に瑕疵はなかったか(より具体的には,屋台営業の実績を考慮して審査を行うという委員会の申合せに不合理な点はなかったか。)という問題の検討が求められる。
①の問題については,Bが本件区画で10年以上も屋台営業を行ってきたという事実を踏まえ,市道占用許可は財産権保護の観点から更新が原則であるという解釈が成り立たないか,屋台営業において他人の名義を借りることは,A市における実害や過去の取扱い,道路法及び本件条例で定める市道占用許可の要件に照らして,営業の実績が全て法的な保護に値しなくなるほど悪質な行為と評価できるかといった検討を行うことが要求される。この①の問題の検討の結果を踏まえ,市長が本件不選定決定を行う際に自身の公約を重視する一方でBの地位に更なる配慮を行わなかったことについていかなる違法事由を主張すべきかが論じられるべきことになる。
②の問題については,委員会の申合せが本件条例施行規則第19条各号の選定基準に照らして是認することができるか,また,新規に屋台営業を始めようとして公募に応募した者の利益を不当に侵害することにならないかの検討が要求される。前者は,基本的に本件条例施行規則第19条各号の解釈の問題であるが,後者は,とりわけ,屋台営業候補者選定指針は目にしたものの本件委員会の申合せを知るすべもなく公募に応募した者の権利保護といった観点からの検討が期待される。この②の問題の検討の結果を踏まえ,最判昭和50年5月29日民集29巻5号662頁を参考にして,市長が本件不選定決定を行うことによって「特段の合理的な理由」がないにもかかわらず委員会の推薦を覆したとの違法事由を主張し得るかが論じられるべきことになる。

 

令和2年度
農地を他の目的に転用するに際しては農地法第4条第1項に基づく都道府県知事等による農地転用許可を要するが,当該農地が農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」という。)第8条第1項に基づく市町村の農用地利用計画により,農用地区域内の農地に指定されている場合には,原則として,農地の転用は認められない。したがって,こうした農地を転用するためには,その前提として,農振法第13条第1項に基づく計画変更による当該農地の農用地区域からの除外を求めなければならない。本問は,近隣農家のための医院設置を目的として農地(以下「本件農地」という。)を転用するため,それを農用地区域から除外するためのB市による農用地利用計画(以下「本件計画」という。)の変更が求められた事例について,農振法や関係法令の仕組みを踏まえながら,そこでの法律問題を分析することが求められている。
まず,本問の事例においては,Xによる本件農地を農用地区域から除外するための本件計画の変更をB市が認めておらず,それを争う前提として,本件計画の変更及びその申出の拒絶の処分性が問われている(設問1(1))。さらに,本件計画の変更及びその拒絶が処分であることを前提として,Xによる本件農地の農用地区域からの除外の申出をB市が受け付けず,これに対する可否の通知をしていない状況において,Xが選択すべき抗告訴訟の検討が求められる(設問1(2))。最後に,B市により,本件申出を拒絶する通知がなされた場合に,それに対する取消訴訟において,Xがどのような違法事由を主張すべきかが問われている(設問2)[やや複雑な法令の適用関係に照らして,農振法第13条第2項第5号の要件の充足性を検討する/委任した法律の趣旨目的に適合するように解釈]。以上の点について,【法律事務所の会議録】を踏まえながら,そこで示されている弁護士Cの指示に沿って,B市による反論も想定しつつ,弁護士Dの立場から検討することが求められる。

 

 

 

 

 

 

予備試験の出題動向(出題の趣旨からの抜粋)

令和4年

本問は、文化財保護条例に基づき、町が私有地にある古墳を文化財に指定した処分(以下「本件処分」という。)について、当該私有地の所有者が、本件処分から16年後、当該古墳一帯を開発するために無効確認訴訟の提起を検討しているという設例の下で、取消訴訟の訴訟要件としての出訴期間の意義・理解とともに、無効確認訴訟の訴訟要件
及び本案勝訴要件に関する基本的な知識・理解を試す趣旨の問題である。

設問1では、まず、本件処分に不服のある原告は、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)第14条が定める出訴期間の経過によって原則として適法に取消訴訟を提起することができないこと、そのため、無効確認訴訟を提起することが考えられるが、無効確認訴訟の原告適格の有無について、行訴法第36条に則して検討することが求められる。
設問2では、まず、処分が重大かつ明白な瑕疵を帯びていることが無効確認訴訟の本案勝訴要件であることについて言及した上で、①本件処分の内容が不明確であること及び②条例に定める諮問手続を欠いていること等の瑕疵が本件処分の無効事由に当たかどうかについて、本問における事実関係を踏まえて紛争当事者の主張を想定しながら論ずる必要がある。

 

 

令和3年度

本問は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を受けている収集運搬業者が,その事業範囲の変更許可を申請したのに対し,行政庁が一定の条件(以下「本件条件」という。)を付した上で変更許可(以下「本件許可」という。)をしたという事実を基にして,行政処分の附款に関わる訴訟方法及びその実体法上の制約について,基本的な知識・理解を試す趣旨の問題である。
設問1は,本件条件に不満がある場合において,いかなる訴訟を提起すべきかを問うものである。本件条件は本件許可の附款という性質を有することから,本件許可の取消訴訟において本件条件の違法性を争うことができるか,本件条件の取消訴訟を提起すべきかが主に問題となる。その際,本件許可と本件条件が不可分一体の関係にあるか否か,それぞれの取消訴訟における取消判決の形成力,拘束力(行政事件訴訟法第33条)について,本件の事実関係及び法令の諸規定を基に論ずることが求められる。
設問2は,取消訴訟における本件条件の違法性に関する主張を問うものである。とりわけ,本件条件が付されたことに関して主に比例原則と信頼保護について,本件事実関係及び法令の諸規定とその趣旨を指摘し,また,信頼保護に関する裁判例最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決など)を踏まえ,本件条件の違法性を論ずることが求められる。

 

令和2年度

本問は,都市計画法上の開発許可の事前手続を定めた条例(以下「条例」という。)
の運用に際して,市と事業者の間で,事業者の開発制限に関する条項(以下「本件
条項」という。)を含む開発協定が締結され,さらに,本件条項を前提にして,条
例に基づく事前協議を受けることができないという市長の通知(以下「本件通知」
という。)が発せられたという事実を基にして,行政契約の実体法的な制約,及び
取消訴訟の訴訟要件に関する基本的な知識・理解を試す趣旨の問題である。
設問1は,本件条項の法的拘束力を問うものである。本件条項は,公害防止協定
に類する規制的な契約であることから,最高裁判所平成21年7月10日第二小法
廷判決(裁判集民事231号273頁)などを踏まえて,その法的拘束力の有無に
ついて検討することが求められる。その際,本件の事例に即して,とりわけ開発許
可制度の趣旨を踏まえて論ずる必要がある。
設問2は,本件通知の処分性の有無を問うものであり,処分性に関する最高裁
例を基に検討することが求められる。その際,本件通知の法的根拠の有無,本件通
知が条例上の措置や開発許可との関係でいかなる意義を有するか,開発不許可処分
取消訴訟において本件通知の違法性を争うことができるか,などについて,都市
計画法や条例の規定を基に論ずることが求められる。

 

 

 

 

 

 

 

 

令和5年度の出題分野予想

・出題予想としては、抗告訴訟の訴訟要件(処分性・原告適格・訴えの利益など)と違法事由(行政裁量・比例原則・信頼保護)はほとんど毎年出題されていることから、今年も出題されそうです

 

・このほか、行政処分の取消し・撤回に関する問題違法性の承継委任の範囲、行政手続行政指導、公表、抗告訴訟における主張制限、国家賠償法、損失補償に関する問題もそろそろ出題されそうです。

 

・いずれにせよ、その場で考えさせるタイプの問題になるので、行政事件訴訟法の各制度や条文の趣旨、重要判例の内容を理解したうえで、問題となる法令の仕組みや趣旨および問題文の状況をしっかり読み込み、論理的・合理的な解釈・あてはめを行うよう心がけましょう!

 

なお、司法試験の出題は、主として学者委員が問題案を持ち寄り、投票・議論等を経て決まります。ですので、学者委員の関心や考え方を知っておくことは有益です。

学者委員のプロフィールや著作等については、下記記事も参考にしてみてください(私の上記出題予想もこれを一定程度踏まえています)。

kaishaho.hatenablog.jp

 

他の科目の出題分野予想はこちら

 

kaishaho.hatenablog.jp

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