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【重要】司法試験・予備試験での選択科目の選び方

こんにちは、コポローです。

今回は、司法試験・予備試験の選択科目として、何を選択すべきかについて分析をします。

 

選択科目には、倒産法、労働法、知的財産法、租税法、経済法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8つがあり、それぞれ特徴(求められる能力・適性など)が大きく異なるので、どの科目を選択科目として選択するかは、試験戦略として非常に重要です。

 

特に、司法試験は選択科目が最初の科目です(ここで良い手ごたえが得られると、後の科目にも心理的に好影響が期待できます)。

また、3時間で2問を書き上げるので、事前準備が重要となります(素直な問題が多いので事前準備をしっかりすれば、安定して良い成績をとれます)。

 

また、将来の仕事にも大きくかかわりうるので、キャリアプランの面でも、選択科目の選択は重要です。 

 

以下では、各科目について、下記4項目を5段階で評価していきます(本記事の内容は、筆者の独断と偏見に基づくものになりますのでご理解の程よろしくお願い致します)。

①教科書・演習書等の充実度
②学習量の軽重(他科目とのシナジーを含む)
③将来の仕事での有用性
④選択者の人数(多いと情報交換や勉強会がやりやすい)

 

※ 気になる科目については、まずは入門書に目を通すのもよいでしょう。そこで、各科目についておすすめの入門書も掲載しておきます。 

 

 

 

(1)倒産法

①教科書・演習書等の充実度 5
②学習量の軽重(他科目とのシナジーも含む) 3
③将来の仕事での有用性 5
④選択者の人数 4

 

①基本書や演習書も豊富であることから独学でも学びやすい科目といえます。


②倒産法は、破産法と民事再生法の分野から出題されており、かなりの学習量が要求されます。とはいえ、民法民事訴訟法といった民事系の科目との関連性が高いことから、民事系の学習との相乗効果が期待できます。他方、民法民事訴訟法が得意な受験者と戦わなければならないため、相対的に高得点を取ることが難しいともいえます。また、倒産手続はイメージがわきにくく、条文も多いので、勉強していて眠いという人もいるようです。


③倒産件数は毎年多く、今後も増加することが予測できます。倒産手続では、弁護士が管財人などとして活躍します。街弁では個人の破産を、ビジネス法務では企業の破産を取り扱います。また、契約書にも相手方または自分が破産した場合の処理条項を入れることもあり、弁護士として倒産法はほぼ必須の知識といえます。企業破産事件では、高額な金額の動く案件も多いので、金銭的リターンも小さくありません。


④例年比較的多くの受験生が選択しており(最近は8科目中4位),受験仲間との情報共有がしやすいといえます。

 

(総評)民事系科目が得意な人におすすめです。また、倒産法は、ほとんどのことが条文にしっかり書かれているため(会社法に近いイメージ)、条文数が多くて大変ですが、条文の並びを覚えることや条文操作が得意な人には、向いています。

 

倒産法のおすすめの入門書です

 

 

 

(2)労働法

①教科書・演習書等の充実度 5
②学習量の軽重(他科目とのシナジーも含む) 2
③将来の仕事での有用性 5
④選択者の人数 5

 

①受験生が多いことや公務員試験科目であることもあり、教材の充実度はトップクラスです。

②出題範囲は、労働基準法,労働契約法、労働組合法に大別されています。出題が広く、基本書および百選掲載判例はよく理解しておく必要があることから勉強量は他の科目より多いです。暗記量の多さが学習量の増加に繋がっているといわれています(ただ、紛争をイメージしやすく、学習しやすいです)。また受験生が最も多いこともあり、試験の問題のレベルは比較的高めです。民法憲法行政法との関連性はありますが、シナジーはそれほど大きいとはいえません。


一般民事においても、企業法務においても、とても役立ちます。雇用問題は非常に多く、労働者側にも経営者側にも需要があり、合格後の仕事の幅は広いと言えます。もっとも、労働者側、経営者側のどちらかにつくと、その後の案件でも他方の側に立った依頼は少なくなるといわれています。


④例年、選択者は選択科目8科目の中で1番多く、受験生同士の情報共有は非常にしやすいと言えます。

 

(総評)労働関係の仕事をしたい人におすすめです。民法憲法行政法が苦手な方にはおすすめしにくいです。

 

労働法のおすすめの入門書です

 

 

(3)知的財産法

①教科書・演習書等の充実度 4
②学習量の軽重(他科目とのシナジーも含む) 2
③将来の仕事での有用性 3
④選択者の人数 4

 

 ①最近では、教材が徐々に整ってきており、試験対策に困ることはありません。


②テキストの細部までの内容、主要な判例を横断的に理解することが必要です。特許法および著作権法から1問ずつ出題されます。また、法改正が比較的頻繁にある分野なので、条文の内容を十分に理解しなければなりません。もっとも、民法行政法・民訴法等に関連する論点も多く、これら科目の復習になります。ただ、総じて意識の高い受験生が多く、知的財産権に関する経験のある受験生もいることから試験難易度は高めと言われています。

なお、特許法については、(特に文系には)イメージしづらい事例もあり、苦手意識を抱く人も少なくありません。他方、著作権法については、音楽・映像のネット配信など時事問題も多いことから、比較的、飽きずに学習ができるでしょう。


インターネットの発達によって、法律家が知財を扱う機会は増えているため、今後高い需要が見込まれています。企業法務でも重要性は高まってきています。もっとも、特許などを扱わない一般の法律事務所では知財案件は弁理士に任せることも多く、その専門知識に広い汎用性があるとはいえません。


④受験者数順では8科目中3位ですので、情報共有に困るとはいえないでしょう。

 

(総評)将来、知財関係の仕事をしたい方におすすめです。

 

 

知的財産法のおすすめの入門書

 

 

 

(4)租税法

①教科書・演習書等の充実度 2
②学習量の軽重(他科目とのシナジーも含む) 4
③将来の仕事での有用性 5
④選択者の人数 2

 

①基本書や演習書、講座も充実しているとはいえず、他の科目に比べて独学では学習がしづらい科目です。


②出題は主に所得税法と,それに関係する限度で法人税法及び国税通則法から2問出題されます。このように実体法だけでなく手続法もあるため、勉強量が多いようにも思われます。

しかし、司法試験考査委員の出題の趣旨にあるように所得税法がメインです。そして、その所得税法の中でも「所得分類」(ex.その所得が事業所得、雑所得、給与所得のいずれに分類できるか)の出題は過去の司法試験でも頻出しています。

覚える事項は比較的少なく学習量は多くありません。学説の対立も少なく、判例の言い回しを正確に記憶・理解すれば,十分に合格答案を作成できます。法改正は多いですが、試験に関係する部分はほとんど変わりません。
また、簿記や会計の知識は必要ではなく(そのような知識が必要な問題は出題範囲外)、基本的な計算ができれば試験の面では十分です。


税制の理解は実務では非常に重要です。租税法の知識があれば、企業の企画立案、税務コンサル、IPO(株式上場)支援、M&A等、幅広い金融に関わることができます。近時、法曹も法律のプロとしてだけではなく、「経営」のアドバイザーとしての活躍の場が広がっており、目指す方が増えています。

司法試験合格は、公認会計士試験の一部免除要件に繋がり、最小限の労力で「公認会計士試験合格」を果たすことが可能になります。その際に、司法試験選択科目で「租税法」の理解をしていることは大きな武器になることは間違いありません。税理士登録をする際にも、名ばかり「税理士」ではない活躍が期待でき実務上は極めて重要です。

 

④租税法は、例年受験生は比較的少ない方(6位(約6%))ですので、受験仲間との情報共有がしやすいとはいえません。

 

(総評)将来の仕事への汎用性が広い(ビジネス全般において重要)という観点および勉強量がそれほど多くないという観点から、おすすめです。

 

 

租税法のおすすめの入門書

 

 

(5)経済法

①教科書・演習書等の充実度 3
②学習量の軽重(他科目とのシナジーを含む) 3
③将来の仕事での有用性 2
④選択者の人数 4

 

 ①独占禁止法がメインとなり,その他の関連法律も一応経済法に含まれますが,ほとんど問題とはなりません。教材や講座が必ずしも豊富とはいえませんが、試験対策としては基本書と判例百選・ケースブックで対応可能な科目です。


独占禁止法は刑法に類似している科目であり、刑法が得意な受験生にとっては取り組みやすい科目といえます。行為要件・効果要件の定義を示し,その要件に問題文の事実をあてはめて結論を導くことになります。

体系的にもスッキリしており、内容自体の難易度は比較的低いため必要な勉強量は少ないといえるでしょう。もっとも、優秀な学生が受験生として多いといわれていることから相対的に高評価を得るのは難しいと言われています。


優秀で検察官を目指す受験生が多く選択する科目です。また独禁法を取り扱うような大きな法律事務所(や検察特捜部)では需要がありますが、それ以外での需要は多いとはいえません。


④経済法は,当初はあまり選択者が多くはありませんでしたが、最近では8科目中2位に位置するようになりました。ですので、受験仲間との情報共有がしやすいといえます。

 

(総評)刑法が得意な方、検察官志望の方におすすめです。

 

 

経済法のおすすめの入門書

 

 

 

(6)環境法

①教科書・演習書等の充実度 2
②学習量の軽重(他科目とのシナジーを含む)5
③将来の仕事での有用性 3
④選択者の人数 2

 

 ①受験者が少ないので教材や講座が豊富とはいえません。もっとも、試験対策としては基本書と判例百選・ケースブックで対応可能な科目です。

 

②出題範囲は環境訴訟と環境法政策の分野に大別されています。環境訴訟については訴訟類型の選択,個別法の解釈といった行政法の理解がそのまま活かせます。環境法政策については、考査委員の出版している著書で十分に対応可能です。また、民法不法行為分野、行政法との関係が密接で、勉強のシナジーという面で非常にお得な科目です

法改正が多くそのフォローを要しますが、試験問題自体はPPP(汚染者負担原則)などの理解を応用した制度設計を問う現場思考型のものが多く、勉強量自体は比較的暗記量は少なめです。他方、水質汚濁防止法、土壌汚染対策防止法などの個別法令の引用・理解といった条文重視な科目です。

以上のように暗記量は少ないので、効率的な勉強ができれば少ない勉強量でも結果を出すことができるため魅力的な科目です。

 

③環境訴訟を視野に入れない限り、基本的には汎用性のある科目とは言えません。しかし、最近のサステナビリティ・ESG等が重視されている世の中の流れを踏まえれば、将来性も小さくないと思われます。


④受験生は例年少ない(8科目中7位(4%前後))ので、受験仲間との情報共有がしやすいとはいえません。

 

(総評)不法行為法と行政法とのシナジーにより、コスパよく勉強したい方におすすめです。不法行為法や行政法が得意な方に向いてます。

 

環境法のおすすめの入門書

 

 
 

 

 

(7)国際関係法(公法系)

①教科書・演習書等の充実度 2
②学習量の軽重(他科目とのシナジーを含む)4
③将来の仕事での有用性 1
④選択者の人数 1

 

①教材がかなり少ないため、基本テキストや判例の学習が中心になります。

 

②条約や国際判例の解釈が学習の中心になります。受験者は、選択科目中最少であり高得点を狙える科目です。具体的には、条約や国際判例(勧告的意見、仲裁裁判判決等)の解釈がポイントになります。

国際法法源国際法の主体、国家責任、管轄(海・空・宇宙),環境・経済・人権,紛争解決等がポイントになり、対象となる法も多く範囲も広範といえます。もっとも、理論的な成熟性の高い科目であり、国際政治・情勢に関心のある受験生には興味を持って取り組みやすい科目といえます。


③将来の有用性は未知数ですが、国連職員、外務省職員、グローバルな働き方を目指している場合には有用です。弁護士会の国際部などで国連絡みの仕事をしない限り、通常の弁護士は触れる機会は少ないでしょう。


④受験人数は8科目中最下位(約1%)ですので、受験仲間との情報共有やゼミ等を組むことは難しいでしょう。

 

(総評)国際機関等で働きたい方におすすめです。

 

国際法のおすすめの入門書

 

 

 

 

(8)国際関係法(私法系)

①教科書・演習書等の充実度 2
②学習量の軽重(他科目とのシナジーを含む)4
③将来の仕事での有用性 2
④選択者の人数 3

 

 ①基本書は比較的豊富ですが演習書などの教材は少ないです。
条文数が少なく勉強の負担は比較的軽いです。範囲は、国際私法・国際民事訴訟法・国際取引法の分野に分かれています。

かなり負担が大きそうですが、出題される分野はほぼ決まっているため、勉強しやすく、覚えるべき知識は少ないメリットがあります。比較的少ない勉強量で済むため総合的にみて学習しやすい科目といえます。


③渉外案件を取り扱う事務所はもちろん、最近では、一般民事の分野でも、家族関係等を中心に触れる機会が増えてきています。グローバル化に伴い、国際結婚が増えているのがその背景にあります。国際ビジネス関連の仕事をしたい方におすすめです。


④受験者は8科目中5位(約10%)ですので、受験仲間との情報共有やゼミ等を組むこともそれほど難しくありません。

 

(総評)国際ビジネス法務に関する仕事をしたい人におすすめです。勉強量のコスパを重視する人にもおすすめです。その反面、民法民事訴訟法が苦手だと大変です。

 

国際関係私法のおすすめの入門書

 

 

最後に

選択科目の選択については、各大学や各ロースクールごとに開講されている科目数や授業のわかりやすさ(担当教員の実力)も異なるので、その点も加味しましょう。

また、学部でも開講されている科目については、学部生時代から勉強することができます。学部生時代にいくつか気になる科目を履修して比較することもおすすめです。

 

本記事が選択科目を選ぶ上で参考になればと思います。本記事の内容は随時更新していきます。

 

それではまた!

 

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